4月に入社したてホヤホヤエンジニアのこん(@k0n_karin)です。入社後3日間のオンボーディングで「病院ごっこ」というヘンリーならではのプログラムを体験させていただいたので、病院ごっこで実際に何をしたのか、そしてそれを通して感じた「病院業務の難しさ」と「それを日々回している医療従事者のすごさ」を、入社直後の視点で書いていきます。
本記事がヘンリーや医療ドメインに興味を持つきっかけになれば幸いです。
ヘンリーは何をしているか?
病院ごっこの前に、まずは簡単にヘンリーの紹介をします。
株式会社ヘンリーは、病院向けの基幹システムとして、電子カルテとレセプトコンピューター(会計・請求システム、通称レセコン)を開発・提供している会社です。提供している「Henry」は、電子カルテとレセコンが一体になった病院向けの業界唯一のクラウドネイティブ型のマルチテナントシステムで、病院業務のDXを進めることを目指しています。 (なお、医療機関には大きく「クリニック(診療所)」と「病院」があります。病院は入院(病棟)がある分業務フローが増え、多職種連携や会計・請求も複雑になりやすいのが特徴で、ヘンリーが向き合っているのはまさにこの領域です。 )

背景として、日本の医療は制度と業務が複雑で、会計・請求の仕組み(診療報酬制度)に強く依存します。そのため中核のレセコンは更新が難しく、20年以上前に作られたシステムが主流になってきました。医療システムはオンプレ中心で、クラウドでも病院ごとに専用環境を用意する形が多く、マルチテナント型のシステムが前提になりにくい領域でした。
ヘンリーはここに対して、スタートアップとして「自社でレセコン一体型電子カルテを作る」ところから挑戦し、クラウドネイティブならではの継続的な改善を医療現場に提供しています。「社会課題を解決しつづけ、より良い世界をつくる」をミッションに、難易度の高い医療領域に向き合っているのがヘンリーです。

病院ごっことは?
名前は「ごっこ」ですが、中身はかなり本気で、病院の実際の業務フローを一通りなぞりながら、Henryをご利用いただいている医療現場のお客様を本気で理解するプログラムです。

病院ごっこで登場するロール
すべてのロールを説明しているとキリがないため、ここでは一部を列挙するだけにします。
- 医師
- 看護師
- 医療事務
- 薬剤師
- 臨床検査技師
- 放射線技師
- 管理栄養士・栄養士
- リハビリセラピスト
- 医療ソーシャルワーカー
そして、それぞれのロールが医師の指示(オーダー)を受け、患者に様々な医療行為をします。
実際の病院では、上記以外にも多数のロールが登場し、それぞれのロールが患者に対し医療行為を行うため、ロールの数だけオーダーも増え難しくなります。またオーダーの種類の多さもさることながら、多くのロールが国家資格を有するため、オーダーの内容も非常に専門性が高くなっています。
エンジニアとしては、患者情報や各種オーダーをどのようにモデリングし、どのロールが見てもわかりやすいようなUIを表現できるか、に思いを馳せていました。
病院ごっこで体験した業務フロー
8種類の業務フローに取り組みました。
- 外来(初診)
- 外来(再診)
- 入院準備〜入院当日
- 入院中のあれこれ
- 転棟・退院
- レセプト業務
- 外来のリハビリテーション
- 入院のリハビリテーション
外来の受診はほとんどの人が患者として経験したことがあると思いますが、患者からは見えない入院時の業務やレセプト業務は想像しづらかったです。
一例として、特に難しい入院準備〜入院当日のフローを紹介します。一人の患者が入院するシナリオがこのようになっています。

かなり詳細を省いて簡略化していますが、これでも一人の患者が入院するためのプロセスが多いことがわかります。またそれぞれのステップで確認・入力する内容が専門的で量も多いです。
このフローを二人一組でペアを組んでいくつかのロールを担当して、Henry上で操作していきます。すべて完了するまでに2時間以上かかり、その難易度の高さからみんな頭を抱えていました。

また、レセプト業務という言葉はあまり聞き馴染みがないかもしれません。
医師が各ロールに対しオーダーを出し、オーダーに従って様々な医療行為を行います。この医療行為に対して診療報酬が発生します。皆さんも医療機関を受診した際に会計で受け取るこういう紙です。

診療報酬は1点=10円で計算され、この診療報酬が病院の収益の源泉となっています。診察した際には患者の健康保険に応じて総額の1〜3割程度を請求し、残った金額は後日まとめて審査支払機関に申請して受け取る必要があります。 審査支払機関に提出するデータ(レセプトデータ)は当月の全患者分の診療報酬の明細をまとめ、翌月10日までに提出する必要があります。休日・祝日・年末年始は考慮されません(!?)。 提出したデータが審査され、受理されれば翌々月に支払われます。もし、提出したレセプトデータに不備があると返戻(へんれい)され、修正して再提出しなければなりません。

さらに診療報酬のルールはこれくらい厚みがある上に、2年に一度改定があります。

これだけでレセプト業務がいかに難しいかわかりますね。これを知ってから、医療機関に行った際の業務や会計の見え方がかなり変わりました。
病院ごっこで感じたこと
病院ごっこを通して病院内の業務フローを体感できたのはもちろんですが、やはり業務の難しさが非常に印象的でした。難しい上に、患者さんをケアしながらカルテの記載などの事務作業も並行する必要があることを知り、医療従事者の方々の日々の業務がいかに大変かを実感できました。
ロールによって電子カルテとは別の専門システムなども操作する必要があり、薬剤師なら調剤システム、放射線技師ならPACS(医用画像管理システム)など、この他にも多種多様なシステムが存在します。それらと電子カルテを連携させることを前提に開発する必要性も知りました。同時にヘンリーでは、患者さんのケアを妨げず、どんなロールでもスムーズに操作できるプロダクトを提供する必要があります。複雑な業務フローをいかにシンプルで簡単な体験として提供できるかをこれから考え続け、理想の状態を目指して開発していきたいと感じました。
また、レセプトに関わる業務は、さながらエンジニアリングのデバッグのような難しさを感じました。行った医療行為や患者の疾病に対して、分厚いルール本を読み解き適切な診療報酬を請求する中で、ときには過不足がある状態や誤ったレセプトになることもあります。誤ったレセプトで返戻が多発すると、病院の資金繰りが悪化するため、レセプトは病院の経営に直結しています。社内で過去に医療事務の経験がある方もおり、レセプト業務は「宝探しみたいで楽しい」と表現される方もいらっしゃるようでした。
レセプトのさらに難しいところは、公費の存在です。患者への請求は健康保険の種別や自治体ごとの公費によって支払い額が決まります。 公費は、国や地方自治体から補助される制度で、わかりやすいもので言うと国の指定難病の医療費助成や東京都の乳幼児や子どもの医療費助成です。この公費は国や都道府県のレベルだけでなく、市区町村のレベルで独自の制度を持っています。全国の市区町村の総数を考えると、恐ろしく膨大な量のルールになりそうです。
ここまでの内容はヘンリーが扱う難しさのごく一部で、これ以外にも様々なところで医療ドメイン特有の難しさがあるそうです。震えますね。医療ドメインのキャッチアップはまだまだかかりそうです。こういった難しさと向き合う中で、社内ではBiz・Dev問わず、実際にHenryを導入いただいた病院や導入前の病院に見学に行き、ヒアリングや検証を行って顧客理解を深めています。
おわりに
このように、病院の業務は複雑かつ多種多様で、膨大な知識量が求められます。人一人ではとてもカバーしきれず、昨今の生成AIでも簡単に解決できるものではありません。本記事を読んで、ヘンリーに興味を持ってくれた人はぜひ勉強会やカジュアル面談でお話しましょう。