株式会社ヘンリーでSREをやっているTODA(@Kengo_TODA)です。弊社ではGoogle Cloud Platform(GCP)を活用してサービスを構築しており、またサーバサイドにはKotlinを利用しています。Cloud Runで動くJVMサービスの監視にログベースの指標が便利だったので紹介します。
何をもってJVMで駆動するサービスを「メモリが足りていない」と判断するか
Cloud Runのメモリ監視で最も利用しやすいのは、Cloud Monitoringでメモリ利用率などを見ることでしょう。次に示す図のように、サービスごとのデータを取ってグラフ化できます。
ではこのグラフから何がわかるのでしょうか?例えば下側に紫色で示されたCloud Runサービスはメモリにずいぶんと余裕がありそうです。常時この状態であれば、メモリ割当量を減らしても良さそうですね。
反面上側にオレンジ色で示されたCloud Runサービスは、だいぶメモリを使っています。しかし、これをもって「メモリが足りないので増やす」判断を下すことはできません。JVMで動いているサービスは、Javaヒープなどの領域がどのように使われているか・フルGCがどの程度生じているのかを分析して初めて「メモリが足りているかどうか」判断できるからです。
単にメモリの利用率だけを監視すると、むしろ理想的にメモリを活用できているサービスを”犯人”だとしてしまう可能性があります。実際弊社でもユーザ増加に起因するメモリ利用量増加によって、一部サービスが頻繁にアラートを投げるようになりました。
フルGCの回数を数える
それでは対象のCloud Runサービスで、どのくらいフルGCが実行されているのか数えてみましょう。
GCの発生回数を取得するには、まずGC実行記録をログを出すようにします。最新のJVMで必要な設定は久保田さんのUnified JVM Loggingに詳しく説明されていて、弊社では -Xlog:gc
をJVM起動オプションに追加しました。この設定により、以下のようなログがCloud Loggingに出力されます:
[4204.610s][info][gc] GC(223) Pause Young (Allocation Failure) 139M->72M(247M) 4.592ms [4077.128s][info][gc] GC(217) Pause Full (Allocation Failure) 176M->62M(250M) 302.523ms
こうしたログがあれば、grepやwcを組み合わせてフルGC回数を数えることはできそうに感じませんか?GCPの「ログベースの指標」はこうしたニーズの面倒を見てくれます。例えばTerraformなら以下のように設定すると、対象サービスのフルGC回数を数えられます:
resource "google_logging_metric" "full_gc" { name = "${google_cloud_run_service.service.name}-full-gc" description = "The full GC (G1GC) triggered in the target JVM" filter = join(" AND ", [ "resource.type=\"cloud_run_revision\"", "resource.labels.service_name=\"${google_cloud_run_service.service.name}\"", "textPayload:\"[gc]\"", "textPayload:\"Pause Full\"", ]) metric_descriptor { metric_kind = "DELTA" value_type = "INT64" } }
更にMetrics Explorerを使うとグラフ化もできます。弊社の事例では、時間帯によってフルGCが生じているものの最頻値でも1分に1回程度であり、余裕はあると判断しました:
フルGCが頻繁に実行されたらSlackに通知を投げる
さて今は余裕があるとしても、今後負荷が増えてフルGCが増えてくる可能性もあります。よってフルGCの頻度が増えたらSlackに通知を投げるようにしておきましょう。これはCloud Monitoring Alertsによって実現できます。
今回はサービスごとのフルGC回数を数え、5分間に10回以上のフルGCが実行された場合にアラートを投げるようにしました。ケースによってはコンテナインスタンスごとにフルGCを数えても丁寧で良いと思います。
resource "google_monitoring_alert_policy" "full_gc" { display_name = "[${var.env}] Frequent Full GC (${google_cloud_run_service.service.name})" combiner = "OR" conditions { display_name = "Full GCが5分間に10回以上実行されました。" condition_threshold { filter = join(" AND ", [ "metric.type=\"logging.googleapis.com/user/${google_logging_metric.full_gc.name}\"", "resource.type=\"cloud_run_revision\"" ]) threshold_value = 9 duration = "300s" comparison = "COMPARISON_GT" aggregations { alignment_period = "60s" cross_series_reducer = "REDUCE_SUM" per_series_aligner = "ALIGN_SUM" } } } notification_channels = [ var.notification_channel, ] }
まとめ
Cloud Runで動くJVMの監視では、単にメモリ利用率だけ見てしまうとノイズが多くなることを見てきました。 これを踏まえてフルGCの頻度を監視し、高頻度のGCを検知したらSlackにアラートを投げるように変更したことで、ノイズを減らしてより本質的な監視ができるようになったと感じています。
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